ヤドリムネボソアリ

フタフシアリ亜科

ムネボソアリ属

日本には16種が知られており、岐阜県では8種確認されています。


ヤドリムネボソアリ( Temnothorax bikara ):岐阜県と富山県で分布が確認されています。 このアリは岐阜市金華山の個体をもとに新種記載されました。このアリはハリナガムネボソアリの巣内に見られます。飼育下では、近くのハリナガムネボソアリの巣から幼虫や蛹を奪い(奴隷狩り)、それらから育った個体を一生奴隷として働かせます。体長:2mm。


ここでは、主に飼育下におけるヤドリムネボソアリの行動などを中心に紹介します。


写真①:中央がヤドリムネボソアリの働きアリ。キノムラヤドリムネボソアリと同様に腹柄節と後腹柄節が頑丈にできている。岐阜市 2015

写真②:羽化直後のヤドリムネボソアリの働きアリ。岐阜市 2015

写真③:ヤドリムネボソアリとハリナガムネボソアリの混合巣。ヤドリムネボソアリの後腹柄節(矢印左)はハリナガムネボソアリの後腹柄節(矢印右)と比べ台形状で頑丈。岐阜市 26.I.2015

写真④:中央にヤドリムネボソアリの女王アリと女王の体をなめるヤドリムネボソアリの働きアリ。女王の腹柄節や後腹柄節も頑丈にできている。岐阜市 26.I.2015

写真⑤:巣内の様子。中央やや下にヤドリムネボソアリの女王アリ。岐阜市 2015

写真⑥:巣内の様子。中央にヤドリムネボソアリのオスアリ。岐阜市 2015

写真⑦-1:飼育下におけるヤドリムネボソアリの奴隷狩り。V.2015

1月に採集したヤドリムネボソアリとハリナガムネボソアリの混合巣をガラス管の人工蟻巣に移し、室温で飼育を続けたところ5月に奴隷狩りが観察された。おそらく、自然環境下での奴隷狩りは夏に行われるものと思われる。この奴隷狩りはヤドリムネボソアリが中心となるが、奴隷であるハリナガムネボソアリも参加する。写真右側のようにタンデムランニングにより1~2頭を襲う巣まで誘導する。これを繰り返すことで個体数を増やし、一気にハリナガムネボソアリの巣を攻撃する。

写真⑦-2:時には数珠つなぎ状態になる。

写真⑦-3:目標のハリナガムネボソアリ巣内に入っていくヤドリムネボソアリの働きアリ。

写真⑦-4:ヤドリムネボソアリ(左下)に噛みついて抵抗するハリナガムネボソアリの働きアリ。

写真⑦-5:襲われているハリナガムネボソアリの巣はパニック状態になり大混乱。

写真⑦-6:激しく抵抗する個体には最終的には毒針で殺す。

写真⑦-7:巣から幼虫を持ち去るヤドリムネボソアリを攻撃しようとするハリナガムネボソアリ

写真⑦-8:襲われたハリナガムネボソアリの女王アリはついに巣外に避難。この奴隷狩りでほとんどの幼虫や蛹などが奪われたが、抵抗しなかった働きアリと女王アリは殺されなかった。

写真⑧:ヤドリムネボソアリの生息地一例(岐阜市金華山)。29.I.2015

やや乾いた明るい林内で発見されたが寄生率はかなり低い。(この場所での寄生率は0.3%)そのため野外における奴隷狩りの観察経験はないが、おそらく自然環境下でも同様な現象が行われているものと思う。

岐阜のアリ

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